妖あやし、恋は難し
「…ッ!!お前…!!!」
湊はその姿を見て、ようやく自分のしでかしたことを自覚する。
同時にいつのまにか周りに人が大勢集まっていたことに驚いた。
当然だ。
ここは病院。あれだけ大声で喧嘩をし、挙句人を殴ったと来れば、集まらない方がおかしい。
「病室でなんて騒ぎを起こしているんです!?」
看護師長らしき年配の看護師がやってきて驚きの声を上げる。
「ああ、なんてこと……!!!また、あなた達ですね!!大の大人が、再三注意したというのに病院でのマナー1つ守れないんですか!!?」
「か、彼が絡んできたのです。私は…!」
「言い訳は聞きません!!!黙っていなさい!黙っていられないのなら出ていって!!!ここには他の患者さんもいるというのが分からないんですか!!!迷惑です!!」
湊と女をひどく責め立てる。
過去に何度かこういった喧嘩をしていたのかもしれない。
看護師長は床でうずくまっている結に慌てて駆け寄り、肩を抱いて身体を起こした。
「まあまあ、あなた大丈夫?唇は切れてるし、頬は真っ赤…!!すぐに手当てしてあげるから…!」
「い、いいですっ!平気ですから…すみません騒いで…」
「駄目よ、強がっちゃ。すぐに冷やさないと綺麗な顔に跡が残るわ」
さあ、こっちへ。
看護師長にうながされるまま、結は病室を連れ出され、二人だけが病室に残された。