妖あやし、恋は難し

「…ッ!!お前…!!!」

湊はその姿を見て、ようやく自分のしでかしたことを自覚する。

同時にいつのまにか周りに人が大勢集まっていたことに驚いた。

当然だ。

ここは病院。あれだけ大声で喧嘩をし、挙句人を殴ったと来れば、集まらない方がおかしい。


「病室でなんて騒ぎを起こしているんです!?」


看護師長らしき年配の看護師がやってきて驚きの声を上げる。

「ああ、なんてこと……!!!また、あなた達ですね!!大の大人が、再三注意したというのに病院でのマナー1つ守れないんですか!!?」

「か、彼が絡んできたのです。私は…!」

「言い訳は聞きません!!!黙っていなさい!黙っていられないのなら出ていって!!!ここには他の患者さんもいるというのが分からないんですか!!!迷惑です!!」


湊と女をひどく責め立てる。

過去に何度かこういった喧嘩をしていたのかもしれない。

看護師長は床でうずくまっている結に慌てて駆け寄り、肩を抱いて身体を起こした。


「まあまあ、あなた大丈夫?唇は切れてるし、頬は真っ赤…!!すぐに手当てしてあげるから…!」

「い、いいですっ!平気ですから…すみません騒いで…」

「駄目よ、強がっちゃ。すぐに冷やさないと綺麗な顔に跡が残るわ」


さあ、こっちへ。


看護師長にうながされるまま、結は病室を連れ出され、二人だけが病室に残された。


< 48 / 118 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop