妖あやし、恋は難し
病室に充満する黒々とした妖気
巨大な黒い猫の体
逆立つ毛波
赤い目、大きく鋭い牙
その化猫がぎょろりと結の姿を捉える。
『ガルルル…!!フーフーッフー!!!』
牙を剥き出しにして唸り声をあげた。
(暴走化し始めてる…!!思ったより状況が悪い!)
結は霊符を取り出し妖に向かって投げつける。
「多少苦しみます! しばしご辛抱を!!」
その瞬間霊符は化猫の全体に張り付き、真っ赤に染まって化猫の身体を締め付けた。
『ギャアァアアアーー!!!』
化猫は唸る。
結はそれを心苦しく思いながらも、急いで遥の元に駆け寄った。
(彼女が持ってるはず、妖を繋ぎ止める何かを…!)
それはすぐに見つかった。
首にかかっているペンダント。
明らかに妖気が漏れ出ている。
(すいません、お姉さん!なんとか耐えてくださいっ!!)
心の中でそう祈り、ペンダントを霊符で包み握りしめた。
【縛印・解】
五芒星を描き念を込めた瞬間、彼女の手の打ちでバチバチと電気が放電するようペンダントが輝きだした。