妖あやし、恋は難し
「…み、なと…」
「ッ!!!姉貴!」
湊は急いでベッドに駆け寄った。
そこにはうっすらと目を開け、湊を見つめる遥が。
「姉貴、俺が分かるか…!!」
「…ええ。ひさしぶり、ね…今日は、不思議と…体が、らくなの…」
なぜかしら
遥は笑いながら、おかしそうにそう言った。
湊もまたつられるように、笑みとは言えないものの、心なしか柔らかな表情を浮かべて。
「信じられない…!!」
腰を抜かして病室の隅に座り込んでいたニセ占い師。
ここ最近は全く目を覚ましていなかった遥が、結が何やら行ってすぐに目を開けるなんて。
(じゃあ、彼女は、本当の本当に…ホンモノの…!!)
「あの」
「ッッ!!?は、はいっ!!」
いつの間にか目の前に結がいた。
こんな時だから彼女の巫女装束が余計に目につく。
「話聞いてましたよね、今回お姉さんが死にかかっていたのは他でもない、あなたが持ってきた道具のせいです」
もう一回言います。
結は女の耳元に顔を寄せて、湊に聞こえないように静かな声で囁く。
「二度とお姉さんたちに近づかないで。あなたがどんな商売しようと、どうやって金儲けしようが知ったこっちゃないですけど、私の目が届く場所でそんな素振りしようものなら…分かりますね?」
「……ッ!!は、はい…!!!」
結の静かな脅しは、女を震え上がらせ、
慌てる様に足早に病室を出ていく。
その瞬間病室の内側に張っていた結界が破れ、結は崩れる様にその場に倒れ込んでいった。
気を失う直前、
ぼんやりと湊の声が聞こえたような気がした。