妖あやし、恋は難し
二度目のさようなら
◇
「……んん…、あれ…ここ…?」
結はゆっくりと、上から降り注ぐ白い光を眩しそうに瞼を開けた。
そこに映るのは見知らぬ場所
真っ白な天井、真っ白なカーテン、つんとする独特のアルコール臭、横たわるのはふかふかのベッド。
まるで病室…、病室?
「ああっ!!仕事…!」
そこでようやく、結は、自分が仕事の最中に倒れてしまったことを思い出した。
◇
「あら一条さん。気づいたのね」
「あ、…看護師長さん」
湊に殴られた頬の手当てをしてくれた看護師長がベッドを遮るカーテンの間から顔をのぞかせた。
「あ、あの…私…」
「病室で倒れたのよー。まったくあなたも災難ねえ、あの一家に巻き込まれて。よくケンカ騒ぎするのよー、何度も注意しているんだけどねえ。頬は殴られるし手の平は火傷してるし挙句倒れちゃうなんて…あなた厄日なんじゃない?」
「アハ、アハハハ…」
確かに災難かも、と結がカラ笑いしていると。
「ああ、でも、皇さんのところは逆に幸運に恵まれたわねえ」
と看護師長さんが点滴を代えながら呟いた。
「皇さんのとこの遥さん、不治の病で余命いくばくもないって事だったのに、劇的に病状が良くなったのよ」
先生たちもびっくりしてらっしゃたわーー。
看護師長のその言葉を聞いて、結は胸をなでおろした。