妖あやし、恋は難し

「どうも、うちのもんがご迷惑おかけしやした!!!」


騒ぎの間ずっと微動だにせず座っていた登坂が、勢い良く頭を下げた。

相当肝っ玉が据わってる。この中じゃ唯一見込みがある方だろう。


「こちらも暴れ過ぎた」

「いいえ!全て、こちらの不手際でございやす!!親父から丁重に扱えと再三忠告されていたのに、すいやせんでした」

「もういい、これ以降俺はしゃしゃりでない。俺の仕事は彼女の護衛、あんたの仕事相手は彼女だ。お前らの仕事の話をしろ、俺は彼女を守る。他はどうでもいい」

「分かりやした…」

「少し席を外す、その間に彼女と話を済ませろ。離れた場所で見てる、余計なことはするなよ」

「ッ…分かってる」

「なめた口もきくな」

「っああ」


そう言って湊が離れていくと、蓮は大きなため息を付きながら結に向かって

「とんでもない奴を雇ってくれたな…!!」

と苦言を漏らす。

「雇ったわけじゃ、ないんですけど……」とカラ笑いする結の後ろで「聞こえてるぞ」と湊がいい、さらに冷や汗を流す蓮なのだった。





一方、湊は。

続き部屋になっている隣に移り、懐からタバコを取り出した。

もちろんそこも舎弟たちでいっぱい。

拳銃を取り出すかとあからさまにビビる彼らを横目に、タバコを口に加えた。


「タバコ、吸っていいか?」

「は、はいっ!!!」

すると舎弟の一人が目上の者にするように、自分のライターを取り出して湊のタバコに火をつける。

「…別にそんなことしなくていい。俺はあんたらのボスじゃねえんだ」

「あ、はいっ!すいやせん…つい癖で…」

「俺の事は無視してくれて構わん、余計な事をしない限りさっきのように手は出さないから、安心しろ」

「は、はい…」


湊はタバコの深く吸って、体中に溜まったストレスを一緒に吐き出す。

部屋の中では結と登坂が話している。

内容は分からない。口元を読めばわからに事はないが、仕事の内容には立ち入らない。

その様子を見ながら、湊は昨日の事を思い出していた。


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