妖あやし、恋は難し
◇
「あ、あの…ガードマンさん……」
「…なんだ」
どうやら登坂との仕事話は終ったらしい。
結は恐る恐る、怯えながら湊に話しかけてきた。
「あ、あの…えっと…」
「どもるな、ハッキリ言え」
「ッは、はい…今から、組長さんの所に行きます…あの、ガードマンさんは…」
「勝手にする、俺の事は気にするな」
「あ、…分かりました。すいません…」
そう言って去っていく結の後ろ姿を見て、湊はまたやってしまったと気が付き顔を歪ませた。
姉の一件以来、いつもこうだ。
自分でした事や喋った事に、後から気づいて後悔する。
ただ、感謝を伝えたいだけなのに。
そんな簡単なことも出来ない自分のコミュニケーション能力の低さが嫌になる。
今までそんなもの必要としてこなかった。
怖い顔をして人を脅し、必要なスキルと言えば相手を倒す武術と武器を使いこなす腕だけ。
ずっとそれだけで生きてきた。
嫌われたらどうやって仲直りするのかも、どうやったらこれ以上嫌われないで済むのかも分からないのだから、今更どうすることも出来ない。
だから自分のやり方で、
湊にしかできない方法で、やるしかない。
(ギブ&テイク…これでいい)
彼女が姉の命を守った様に、
(今度は俺が…彼女を守ろう。全力で)
湊は静かにそう誓い、結の後を追った。