妖あやし、恋は難し
「ホントですかい!?ほ、ホントに…!」
喜ぶ登坂達とは裏腹に、蓮は口に出さないものの不信そうな顔で結を見つめている。
湊と同じだ。
結は実績があるが、それでも普通に考えて信じられるわけがない。
そんな蓮の目を見て結は言う。
「助かります。と言っても私たちのような人間の言葉はなかなか信じられないと思いますので、三日、三日下さい。まずその日までに結果を出しますから」
蓮は結の言葉に驚いたようだった。
『信じてほしけりゃ結果を出せ』
何度もそう言って脅されてきたから、彼ら現実主義者の対応の仕方は良く知ってる。
「完治までには一週間かかりますが、三日あれば今の病状からいくらか好転すると思います。それを約束する代わり、一つだけお願いが」
「はいっ何なりと!」
思ったより積極的な様子に、ほっと息を付く。
岸科会の時は結の言葉を全く信じてくれずに苦労したから。
「今日から一週間でいいです、この部屋に誰も入れないでもらえますか?入口は解放してそこでおかしな真似しないか見張ってて貰って構わないので」
「は、はい。…他には?」
「それだけです。まずは三日間、よろしくお願いします」
「はあ…分かりやした」
何だか釈然としてないように見えたが、取り敢えず納得してくれたようである。
さてさて、【陰陽師】の仕事の始まりだ。
結は松葉色の風呂敷を抱え、一人意気込むのだった。