妖あやし、恋は難し
二日目
近くのホテルで休んだ結は、朝から再び除霊を始める。
ご飯を食べることも忘れ、ただ静かにベッドの脇で自分の仕事に徹し続けた。
この日もまた暗くなる頃に終わり、結はホテルへと引き上げる。
まだ組長さんは目を覚まさない。
三日目
連日の除霊で精神的に少し疲れは見えているが、気合を入れて黒木組へと向かった。
湊は同じホテルの同じ階に泊まっているらしく、行きも帰りも結にギリギリまで付き添って行動してくれている。
一方、白鬼の【ハク】はまだ結の半径十メート以内に入れないらしい。
一昨日からあまり姿を見かけていなかった。
しかし、十八年間連れ添った仲だけに慣れというものが自ずと生まれ、そこにいないのに声をかけてしまうことは多々ある。
隣に居る人が似ていればなおの事。
「ねえ【ハク】、昨日何処に…」
「…あ゛?」
たいてい話しかけてから気づき、やっちゃったと後悔するがオチである。
「あ、ご、ごめんなさいっ…つい!!」
「別に」
(あ〜またやった…恥ずかしい…!)
慌てて謝り赤面する結とは対照的に、湊はまぶしそうに目を細めてそっぽを向く。
一昨日ほどではないが、まだキラキラとした粉が溢れていたからだ。
動くたび、まるで彼女の足跡を残すように、それが尾を引いて残っていく。
当の本人はあまり気にしていないようだが湊はどうしても気になってしまい、人目がない時間、場所を選んで行動するよう、一人神経をすり減らすのだった。