妖あやし、恋は難し
向かった先は、ファミレス内に設置されたトイレ。
それも《女子》トイレだった。
湊は遠慮なしに女子トイレのドアを開く。
その行為に結はびっくり。
吐きそうなのも吹っ飛ぶぐらい驚いた。
湊のこの行動はいわゆる『検索と消毒』と呼ばれるもので、簡単に言うと部屋や建物、乗り物などの中に危険物がないか調べ警護対象者の安全を守る作業の事を指す。
そう言った業界の中では当たり前の作業も、結などの普通の人からすればあり得ないことで。
…結もけして普通の人とは言い難いが。
湊がトイレの奥にまで入ろうとしたため、結は慌てて止めに入った。
「ちょ、ちょっと!!待ってください!何してるんですか!?」
「何って…安全の確認だろうが」
「んなもんしなくていいです!!ここトイレですよ!?危険も何もありません!」
「だけどな…!!」
しぶる湊だったが食事の件もありちょっぴり怒っていた結はいつもより強きだった。
湊の前に進み出て、自分よりはるかに背の高い湊の厚い胸板を押しトイレから外に出す。
そして一言
「いいですから!!外で待っててください!もうっ!!」
そう言ってドアを勢い良く閉じ、シャットアウト。
湊はなすすべもなく、一人ポツンと女子トイレ前に締め出されたのだった。