妖あやし、恋は難し
「お任せくださいっ!!私がかの洸太郎様を全身全霊をもってお守り致しましょう!!!」
峯の話を聞き終えると、野太い声の男が手を挙げてそう言った。
迷彩の軍服を着こんだその男は、海外の軍で活躍する軍人
名は庄野(しょうの)というらしい。
やたら元気な声と、ガタイの大きさがよく目立つ。
「黙れ庄野、お前はいちいち煩くてかなわん。静かにやることだけやる、そんなことも出来んのか」
「何をーー! 久し振りに見たと思えば、そのクソまじめなところは全く変わっとらんな!!胸糞悪いこと山のごとし!!」
なにやら知った風に庄野と話すのは、嘉瀬(かせ)と言う男。
眼鏡をかけ、一見インテリ風に見えるがスーツに包まれたその体は程よく鍛え上げられていることが一目で分かる。
「…お二人はお知り合いなのですか」
結が尋ねると、庄野はガハハと笑い答える。
「ああそうさ、お嬢さん!コイツとは腐れ縁よ!」
「…腐れ縁と言ってもただの自衛隊に居た時の同期にすぎん。それから俺は警察に、この馬鹿はアメリカ陸軍に。たびたび会うこともあったがこいつのウザさは一変もせん」
「お前も負けじとウザいからな!忘れるなよ!」
「あはは…」
本人たちは気づいていないようだが二人とも似たり寄ったりだ。
大きななりでまるで子供のように話す彼らを見、結は知らぬうちに笑みを浮かべる。
ひっそり浮かべた彼女の笑みを、峯の傍で壁に寄りかかるように立っていた皇湊は、睨むように見つめていた。