妖あやし、恋は難し
車に乗せられ連れてこられた場所、そこは大きなビルだった。
外観からは何のビルかまでは分からない。
おまけに結は口にガムテープ、手足は縛られ、全く身動きのできない状態だ。
大げさでなく、本当に最悪の状況と言えるだろう。
(どうしよう…!!)
男達に強引に連れられながら、結は必死に打開策を考える。
が、当然そんなものが出てくるはずもなく。
(しょうがないじゃないっ、陰陽師だってこと取ったら私は極普通の女子高生だもん…ッ!!)
ああ、
今さらになって後悔する
あの時、嫌がらずに湊の言う通りにしていれば良かったと。
(ガードマンさん…っ、【ハク】…っ!私、どうなっちゃうんだろう…)
そんな心配も虚しく、ビルのどの当たりかもわからない小さな部屋に入れられた彼女は、背後から突然固い物で後頭部を殴られ、倒れる。
ズキズキと痛む頭と薄れゆく意識の中で、ニヤニヤと笑う男達の顔が酷く恐ろしく彼女の視界に映り込み
より一層の恐怖を脳裏に、それから逃げるがごとく結の意識は深い深い暗闇の中に落ちて言った────