妖あやし、恋は難し
「なっッ!?何だよコレ!!?」
何丁もの拳銃に始まり、自動小銃、サブマガジン、スナイパーライフル
それだけにとどまらず爆弾の原料となるものや手りゅう弾まであるではないか。
日本でこれだけの武器を当たり前のように車のトランクに詰め込んでいる男は、きっと湊だけに違いない。
湊は驚き呆然とする蓮など無視し、トランクの中をごそごそとあさる。
取り出したのは黒の革手袋二組と、サイレンサー付きの拳銃二丁、それに十個の弾倉。
その内の革手袋と弾倉を蓮に手渡し命令する。
「それつけて弾倉全部持ってろ。俺が指示したら二つずつ手渡せ。スムーズにやれよ。それ以外は俺の後ろを付いて来るだけでいい。必要なことはその都度指示する」
「あんた…こんな街中で拳銃ぶっ放すつもりかよ!!?」
「だからサイレンサーつけてるだろ」
「そういう問題じゃないだろ…!?」
「そういう問題だよ」
バタンッ!!と勢いをつけてトランクを閉める。
革手袋をはめ、両手に拳銃を握りしめた湊が顔を上げた。
蓮は息を呑んだ。
ここに来るまで一切見ることのなかった彼の瞳は、あまりに冷たく、鋭く、怒りと憎しみで満ち満ちていたから。
おそらく、もう誰も、この男を止めることは出来ないのだろう。
蓮は覚悟を決め、湊の後ろをついて行く。
怒れる鬼が今、怒濤の歩みを始めた。