きみと最後の1ページまで
「あ、ありがとう」
高木くんは不思議そうな顔をしていたけど、そのまま歩き出した。
私もそれに続いて足を進める。
こうして隣を歩くのなんてあの日以来だ。
あの日はノートの件もあってか自然と会話ができていたのに、今日は妙に緊張してしまう。
自分から誘っておいて何も喋らないのはおかしいので、何か話題を振らないと……。
「もう夏休みだね」
ごく自然かつ無難な話題だと自分に言い聞かせながら高木くんを見た。
こうして改めて隣に立つと、やっぱり高木くんのほうが背が高いことがわかる。
高木くんは「そうだな」と言いながら眼鏡を直していた。
「どこか遊びに行くの?」
「いや、今のとこ予定はないな」
「そうなんだ」
”デートにでも誘っちゃえばー?”
突然頭の中でこの前聞いた彩奈の声がこだまして、はっとなる。
いやいやいや! そんなんじゃないから。本当に。
彩奈のにやにや顔をかき消して、気持ちを落ち着かせてからもう一度隣を見る。
「やっぱり小説書くんでしょ!」