きみと最後の1ページまで
私の名前が綺麗だと、確かにそう言われた。
あんなこと言われたのは生まれて初めてだったので、あの時はただただ嬉しかったけど、今思い出すとなんだか顔がぽっと熱くなる。
なんだろう、この感じ。頭がクラクラしてしまいそうなこの感じ。
そっと周りを見渡すと、人がごった返している。
きっと、この人混みのせいでのぼせているんだと自分に言い聞かせてみた。
「……あっ」
気付くと、さっきまで隣を歩いていた藤ヶ谷くんがいなくなっていた。
これは……もしかしなくても、うまく逃げられてしまったようだ。
あー、やられたと小さく息を吐く。
まあ、名前を知らなかったのは本気っぽかったけど……。