きみと最後の1ページまで
「なんか、祭り囃子とか夜店とかちょうちんがバーッて並んでる光景なんて普段は見れないから。年に何回かの特別な日って感じがする」
高木くんはそう言いながら遠くのほうを見つめて、少し微笑んでいた。
そっか、私と同じようなことを考えていたんだ。
なんだかそれが嬉しくてたまらなかった。
「まぁ、行って見て体験しないと文章に起こせないしな」
「なるほど! そっか。そうだよね」
「引っ越す前は……友達もいないようなもんだったし、こんな風に遊びに行くこともなかった」
「転校してきてよかった?」
「ああ、よかった! ……いいこともあったし」
「いいこと? なにそれ?」
私が聞くと、高木くんはまるで「しまった!」とでも言うような表情をして、すぐに頭を横に振った。
「いや、なんでもない」
「そのリアクションで何もないわけないじゃん。私、気になったらなんでも知りたいの」
「それはよくわかってる。けど、なんでもないから」