きみと最後の1ページまで
「経験値?」
「……今まで書いたことも、考えたことも、読んだこともあんまりないジャンルを書こうと思って」
「そしたらこれだ」と、高木くんは難しい顔をして頭を掻く。
私は小説のことなんてなにひとつわからない、というか読んだ記憶もないくらいだ。
そんな自分にできることなんてひとつだけで……。
私は改めて隣に座る高木くんに向き直り、ぐっと拳を作る。
「頑張ってね。応援してるから!」
急に熱がこもった私に、高木くんは呆気にとられたようにぽかんと口を開けた。
「な、なにそれ。エールを送ってるのに」
「いや、ちょっと驚いて……。でも、なんか頑張れそう。ありがとな」
そう言って、気合を入れ直したように下がっていた眼鏡を押し上げてる姿は、ちょっとかっこいいと思ってしまった。
夜の公園なんていう、普段じゃ味わえない特別な空間だったからかな……。