きみと最後の１ページまで

さっさと回収して帰ろうと教室へ入ると、みんな部活や下校で出払ったあとなので誰もいない……と思ったら居た。


一番後ろの窓際の席に、たった今帰りの支度を終えたばかりだと思われる高木くんが居た。



高木くんのほうは私に気付くとチラッとこちらを見て、すぐ逸らした。


今まで一度も話したことないので、きっと『誰だっけ、こいつ』とでも思われたかもしれない。



何か声をかけるべきだろうか。


クラスメートなんだから、挨拶くらいしてもいいはずだ。



私は自分の机の脇に引っ掛けてあった手提げバッグを手に取ると、「さよなら！」と言うつもりで振り返った。



────が、一歩遅かった。



見えたのは高木くんが教室から出て行く姿。


挨拶しそびれた。少し残念だ。