【短】雨の日の乗車駅
私は荷物を持って慣れ親しんだ家を出た。
傘をさして家の前に立つと、「お世話になりました」と家に向かって頭を下げた。
両親にはすでに挨拶を済ませてあった。
けれど、あまり目を合わせてくれなかったことが唯一の心残り。
私は駅に向かって歩き出した。
駅までは徒歩三十分といったところ。
雨の日の独特な湿気が、ぺたりと肌にまとわりついて気持ちが悪い。
私にとって雨の日は、あまり良い日じゃない。
私が小さい頃は雨の日に階段で滑って骨折したり、お気に入りのワンピースは転んで泥だらけになってしまって、結局泥の染みは洗濯しても取れず、すごく落ち込んだ。
好きな人に告白をすると決めた日は、雨の日の湿気のせいで髪が上手くまとまらず、結局告白もできなかった。
今までろくなことがなかった雨の日。
私はつくづく、雨との相性が悪いのだ。