嘘つき系恋心


そう笑ってひょいっと風呂敷を持つと、もう片方の手でおばあさんの手をしっかりと握った。




「さっ行こ?案内してね?」


「...ありがとう、ありがとうねぇ。そうだねぇ、病院送りになっちゃったら家族が心配するねぇ...」




手を握りかえし柔らかく微笑むと、ゆっくりと歩き出した。




ショッピングモールを出て、住宅街を通り過ぎ、一風変わって田んぼの多い所へやってきた。さほど長い距離ではないが短い距離では無い。車で走って十五分、二十分くらいだろう。



そんな所から何故、おばあさん一人で来たのだろう?と疑問に思っていた所、おばあさんが喋り始めた。




「明日はねぇ...孫が久しぶりに家に来るのよ......それにね、孫の誕生日なの。...だから美味しい物作ってあげたくてショッピングモールに行ってたのよ。......でも、それだけじゃないの。前に来た時ね、喧嘩しちゃったの...。」




どこを見ているのかわからないくらい遠くを見ている。その横顔は少し寂しそうで、後半の部分が少し、涙声に聞こえた。



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