いつもそれは突然で。

夏の夕暮れは冷たくて

掃除もパパッと終わって急いで先輩の教室に向かった。
2本いちごミルクを抱えて。

売店に行くと最後の2本だった。

私は嬉しくてうれしくて仕方なかった。

でもやっぱり3年生のフロアの雰囲気は1つ上とはいえ怖かった。
私は勇気を出して向かった。

先輩の教室は最悪なことに3年生のフロアの1番億の教室。
先輩の教室前まで行って教室の中を覗き込んでみたけど
先輩の姿は見つからない。

私は好きな人の姿を見つけるんは大の得意やのになんで…。

「あ、澪ちゃん!!」

一人の女の人が私のほうへ向かって歩いてきた。

私は後ずさりをしたけど気べにぶつかって逃げれへんかった。

「ごめん怖がらせたかなぁ?」

「あ、い、いえ」

「今日日向の自転車の後ろ乗ってた女のだよね?」

「はい…」

「あ、いちごオーレ!さすが日向の好きなものは知ってるんやね」

また顔が赤くなる。

「日向のこと好きなんでしょ?」

先輩は私にやさしい顔でそう尋ねてきた。
私は普段白い肌を真っ赤に染めて縦にうなずいた。

「なぁなぁ日向の好きな子の名字なんだった?」

先輩は教室に戻ってほかの3年生にそう聞いた。

「なぁなぁ澪ちゃん苗字何て言うの?」

「櫻井澪です。1年B組の」

「あー正解!私日向の友達の白羽美沙よろしくね」

先輩は私よりもずいぶん背が高くて細くてきれいな人だった。

「美沙先輩…」

「美沙でいいよ」

「いやそれは!!」

恐れ多いです。

「じゃぁ慣れたら美沙ちゃんって呼んで」

先輩は私にそういうと私の手を優しくつないで上の階へ歩き出した。

「どこへ行くんですか?」

「屋上だよ」

「屋上?」

「それが知らないんやね、日向はお昼雨じゃなければ屋上にいるんよ
。雨だったらご飯をパパッと食べて図書館にこもるんが癖なんだけどね」

そういわれて私はショックを受けた。

知らないことがあったなんて。

私の知らないことをほかの人が知ってる。

そんなことも普通にあるとは思うしそれが当たり前なんだとは思ったけど
でもなんかショックで。

「ねぇ」

「はい?」

先輩は一瞬歩く足を止めて

「菜音美香」って子友達?

先輩の少し冷たい顔。

「はい、みかちんは中学の時からの友達で私と同じクラスです」

「そうなんだ」

「なんで知ってるんですか?」

「さっきクラスに来たからだよ」

ねぇ神様。
どうかこの嫌な予感が当たりませんように。

屋上前。すごい静か。

先輩は何の躊躇もなく扉を開けた。

「日向―!」

「美沙」

…呼び捨て…。

「どうしたんこんなところに」

「いやぁなんとなく?一緒にお弁当食べようと思ってさ!!」

先輩は無邪気な笑顔でそういう。

私の中で何かが静かに崩れ始めた。

私は何度先輩の手を振りほどこうとしても振りほどけなかった。

私は先輩の背中日向先輩から見られないようにして隠れてた。

いちごみるくを抱えた手が震えて止まらない。

涙も水たまりができた。

声を上げそうになったのをこらえて静かに泣いた。

そしたら先輩の腕は私の腕を離して私の頭を撫でた。

私は先輩の足元にしゃがみこんで泣いた。
いちごみるく抱きしめて。

「菜音美香ちゃんだよね」

「はい!」

このかわいくて明るくて無邪気な声は間違いなくみかちんの声。

「私美沙っていうのよろしくね」

「はい!よろしくお願いします♪」

私はもう限界だった。
だから私は涙を拭いても拭いてもとまらなかったけど
それでも拭って私は日向先輩の前まで歩いていった。

「澪…」

「その名前で呼ぶのはもうやめてください。
私だけと思ってたのに…。
思わせぶりな態度もやめてください。
お弁当箱はポストの上の置いておいてください
食べたくなかったら食べなくていいです。」

がたがた震える体の震度を確かに覚えながら。
ぽっけに入ってたケータイを取り出して先輩の…前で…。

「いつも憧れていました。こんなに近づけて嬉しかったです」

「なにも思わせぶりなんか…」

私の中ですべてが崩れた。
この嫌な女の子になりたくないって思いすらも。
あ、私初めてこの先輩のことを嫌いになりました。

「思わせぶりじゃないですか!
一緒にご飯食べようって約束したのに。
わかりますか?涙って透明だけど、血液なんです。
それだけこんなに流れてるのはそれだけ心が傷ついた証拠なんです」

私こんなに大きい声で話せるんだ…。
そしてこれが最後だ。

ちゃんと先輩の顔を見て夏にさようならをしなきゃ。

「生徒会長はいつも人気者ですね」

そう笑顔でいうのが精いっぱいで。
私はその場から走り去った。

私は屋上の陰大きな木の下まで走ってきた。

きっとこんなに走ったら頑張って作ったうさぎのキャラ弁も台無しだ。

「澪ちゃん!」

私は後ろから追いかけてきた美沙先輩の声に立ち止まった。
先輩は後ろから抱きしめて

「お弁当食べようか」

私にそういったんだ。

私は悲しくて苦しくて過呼吸になってその場に膝からおちた。

それからしばらくして私は落ち着いてから美沙先輩とお弁当を食べた。

美沙先輩は私のお弁当私は美沙先輩のお弁当を食べた。

美沙先輩のお弁当はオムライスで、
すごいおいしくてでもこんなことのあと、ケチャップの味がなんか
すごい酸っぱく思えて失恋の味はレモンのようでした。

「澪ちゃんほら見てみ?」

美沙先輩は私に私が朝頑張って作ったお弁当を見せてきた。

そこにはちゃんと綺麗なかわいいうさぎがこっちを見つめてた。

「きっと日向にはなんか断れない理由があったんだよ。
あとちゃんと澪ちゃんの傷も思いもちゃんと伝わってると思うよ」

「先輩にはわからないよ」

「澪ちゃんに一つ教えてあがようか」

先輩は私のお弁当を食べながら話し出した。

「今日の休み時間さみんながね後ろに乗せてた子誰?って聞いてたんだ
でそれから膨らんだ話なんだけど言っちゃだめだよ
日向は澪ちゃんのこと好きらしいよ」

私の頬をまた濡らす雨。
それは酷く鋭い雨。

でも私は先輩を許すことができなかった。
それから私は泣き疲れて目を開けたときにはもう辺りは茜色で。
美沙先輩の姿はなかった。

私は教室に戻って帰ろうとしたとき教室に美沙先輩がいた。

「おかえり」

きっと心の傷は深いんや。
また涙があふれそうになる。

「今日はごめんなさいありがとうございました。
これ私の連絡先です。よかったら追加してください。
あとお弁当ごちそうさまでした。お弁当箱は私が埋めて返します。
明日持っていきます。」

私は深々と頭を下げてカバンを持って帰った。

学校からしばらく歩いたところでゲリラ豪雨のような雨が突然降ってきた。

私は家の近く空を見た。

こんなにも綺麗なのにこんなにもオレンジ色なのに。
なんでか雨。

私はまたこみあげてきた。
わんわん泣いた。

誰にも見られない人通りの少ない家の近くで。
声を上げて泣いた。

夏の夕暮れは私を殺しに来た。

初恋の終わりかたはあまりにも無残な姿で終わりました。

大好きでした。
ずっとずっと。

家に帰っておねぇちゃんとお風呂に入ってコンビニに行って
お菓子とミルクティーと甘いものたくさん買って
おねえちゃんと夜通し話した。

ママもおねえちゃんも明日と明後日はやすむんや!って言いだして。

美沙先輩にはちゃんと連絡してお弁当はつめて渡した。
おねえちゃんとママは珍しく私の話を聞いてくれてたくさん愚痴を話した。

でも…心の傷は癒えるのは当分かかりそうだ。

私のおねぇちゃんは…

「澪はなにがあっても日向先輩のこと好きなんやろうな」

ってほろ酔いのような表情で
嬉しそうな顔をしていった。

「なんで?」

「先輩のこと好きになって何年?」

「4年」

「そんなに一途な思い簡単に嫌いになれるわけないやん」

確かに。

でも
しばらく先輩の姿は見たくないねん。
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