竜宮城に帰りたい。
「は、晴?」
突然泣き出した晴を見て、
祐くんは慌て出した。
きっと晴が泣くなんてことは初めてなのだろう。
晴は、祐くんを見ると、
思い出したようにその場から歩き去った。
「ごめんっ、祐くん!」
私は唖然とする祐くんに背を向け、
晴のあとを追った。
「晴っ」
晴は人混みに紛れようとするけれど、
やっぱりなぜか人が避ける。
隠しきれない存在感が今は見ているだけで痛々しかった。
「晴!」
海の方まで来て、ようやく晴の腕をつかみ、捕らえることができた。
「ええけん、ほっとき。」
「晴。」
晴の名前を呼ぶと、ビックリするくらい素直に私の目を見た。
ああ…好きだな。
子供のように綺麗な涙を流す彼を
抱きしめてあげたいと思った。
でも…
違うね。
私は自分でもわかるくらい不自然な笑顔を作った。
「瑞希ちゃん…
呼んでくる。」
そう絞り出すように言った声に
晴が唇を噛んだのが分かった。
なんで…
そんな顔するの?
晴の彼女は…
「私じゃない…。」
「お前やろ!」
ドキッ…
私の考えが全部晴に伝わったのかと思った。