竜宮城に帰りたい。
「瑞季とはもう付き合えん。
許嫁みたいな関係も、親が勝手に決めよった勝手なことや。」
「それでもあたしは晴のこと好いてて…」
「俺は友達以上にお前のこと見れん。」
「っ……」
「それに俺、東京の大学行く。」
えっ、東京?
予想外の告白にその場にいた全員が驚きを見せた。
「なっなんでや!
晴はここに残るゆー約束で…」
「そなん約束しとらん。
まぁ大学のあとは戻るつもりやけん。」
「それでも…!お前の親黙っとらんで。」
祐くんの言葉に晴は一瞬固まったが、
すぐ穏やかな笑顔を向けた。
「どーにかする。
俺、澪に東京へ連れてって欲しいんや。」
晴は私の目をまっすぐ見て、曇りなくそう言った。
まるで、乙姫様が浦島太郎の村に行くような…
そんなことを考えると、私は晴のその決断がすごく明るいものに思えた。
『乙姫はのぉ、浦島に行かないでほしかったんやない。
連れてって欲しかったんや。』
浦島太郎なら…
私なら…
晴の願いを叶えてあげられるんだ。