竜宮城に帰りたい。
「うん!晴、東京来なよ!」
私が笑顔でそう答えると、晴は嬉しそうにはにかんだ。
「ま、待ってや…。
晴は東京来なよでホイホイ行けるやつやないんや。」
一方、やはり瑞季ちゃんは納得がいっていないようだ。
「でも…晴自身は行きたいって…」
「そなんこと問題やない!
だって晴やで!?
あのおっきょい家継がなあかんの!
東京やこし行ったら…」
「晴は戻るって言ってる…。」
「戻られへんよ!
東京やで!?楽しゅうて仕方ないに決まっとる。」
「そんなこと……」
「私たちのことなんてすぐ忘れてしまうんや…!」
「それはないよ…!」
瑞季ちゃんは目から大粒の涙を流しながら、
私の顔を見た。
「私にとっては東京よりこっちの方が何倍も楽しくて、素敵なところだったよ。
だから…晴も……」
きっと日常に私を入れたら、
私がたいした人間じゃないってすぐに分かる。
そしたら忘れられるのは……
「もういい、澪。」
「晴……」
「俺はもう決めたけん、親も説得する。」
「……っ、私は認めん!!」
瑞季ちゃんはそう言うと、
祭りの喧騒のなかに走っていった。