竜宮城に帰りたい。




「うん!晴、東京来なよ!」

私が笑顔でそう答えると、晴は嬉しそうにはにかんだ。


「ま、待ってや…。
晴は東京来なよでホイホイ行けるやつやないんや。」

一方、やはり瑞季ちゃんは納得がいっていないようだ。


「でも…晴自身は行きたいって…」

「そなんこと問題やない!
だって晴やで!?
あのおっきょい家継がなあかんの!
東京やこし行ったら…」

「晴は戻るって言ってる…。」

「戻られへんよ!
東京やで!?楽しゅうて仕方ないに決まっとる。」

「そんなこと……」

「私たちのことなんてすぐ忘れてしまうんや…!」

「それはないよ…!」


瑞季ちゃんは目から大粒の涙を流しながら、
私の顔を見た。


「私にとっては東京よりこっちの方が何倍も楽しくて、素敵なところだったよ。

だから…晴も……」


きっと日常に私を入れたら、
私がたいした人間じゃないってすぐに分かる。

そしたら忘れられるのは……



「もういい、澪。」

「晴……」

「俺はもう決めたけん、親も説得する。」

「……っ、私は認めん!!」


瑞季ちゃんはそう言うと、
祭りの喧騒のなかに走っていった。




< 118 / 236 >

この作品をシェア

pagetop