竜宮城に帰りたい。
「そっ、そう言えば…ゆかりっ!
私、ゆかりのこと置いて…!」
「へーきや。
慎に頼んどいた。
笹川のばーちゃんとこ送ってやれって。」
「そっか…よかった…。」
あとでちゃんと謝ろう。
私がこのケンカの発端だ。
怖い思いもさせてしまったかもしれないし。
「えっと…それでなぜ晴が私を連れて今ここに座っているのか…
説明していただけます?」
「そりゃ花火見るためやろ。」
「花火!?私と?」
「見せたかったんや。ええやろ?」
「は、はい…。いいです。」
うわぁ…
すごい嬉しい。
晴が…私に花火見せたいと思ってくれて…
それで今、二人きりで同じ空見て花火を待ってる…
浮かれる心を抑え、平気なふりをして言葉を続けた。
「私、瑞季ちゃんと仲直りしたいな。」
「へぇ、なんで?」
晴は驚くでもなく、否定するでもなく、
私の顔を覗きこんだ。
「フェアじゃ…ないから…。
私、晴に告白したって言ってない。」
「そんなん大事な?」
「うん。」
「ふーん。」
ちゃんと私の気持ちも話して、
それで晴のことも話そう。
じゃなきゃ、きっと私たちはいつまでたっても浅い関係のままだ。
本当に瑞季ちゃんと友達になるには、
踏みださなきゃ…ダメだ。
私がそう決意した時、
ドーンという打ち上げ音とともに、空一面に花のような光が広がった。