竜宮城に帰りたい。
「じゃあ、まずはなんの劇やるか、
それと配役、裏方も決めていきます!」
みんながわいわいと話し始め、
様々な案が出てくる。
他のクラスと被らないような珍しい演目が良いという意見があり、
多数決の末、私たちのクラスの劇は『浦島太郎』に決まった。
元のお話に私たちのクラスらしさを入れておもしろくするみたいだ。
役も推薦や立候補で決まっていく中、
私は動けずにいた。
役なんてやりたくない…。
でも、大道具は人気みたいだし…
できれば早月と同じ裏方の仕事が良いけど…
「ねぇ、早月…一緒に小道具…」
「私…浦島太郎やってみようかな…。」
「え!?」
予想外な早月の言葉につい大きな声が出た。
幸いクラスは騒がしくて目立たなかったけど…
「なんで!?急に…」
「せっかくの学校行事だし、
一回くらい全力で参加してみるのもいいかな…って!」
早月は普段裏方に回る方で、表に出るタイプじゃない。
と言っても、私みたいに裏方の裏方に徹する訳ではなく、
みんなと協力して引っ張っていくタイプだった。
早月なら確かに主役もできそうだ。
頭が良いから、台詞の覚えも早いだろう。
優しくて気が利くから、他の役者とも不和なくやれそうだ。