竜宮城に帰りたい。



「っ……、どうして?」



瑞季ちゃんは眩しい日の光に目を細めて、

光り輝く海を見据えた。



「澪ちゃんの気持ちは分かったよ。

けどな、晴はやっぱり特別なんや。」


「地主の息子だから?」


「それもあるけどなぁ…

なんやろ。わからん?
言葉では言えんけど…
晴の存在感とか雰囲気とか。」



あぁ、それは

よく分かる。


初めて会ったときも、
夜の浜や島で一緒に歩いたときも、
お祭りのときも、

私は晴の不思議な雰囲気にいつだって気づいてた。


魅せられて、とり憑かれてしまう前に逃げようと
目をそらしてきた。


きっとこの町のみんな、
晴が可愛くて、尊敬の対象で、

でもきっと大好きなんだ。




「晴は行かせない。

この町にとっても、私にとっても、
特別だから。」


「私は……」


「でもそなん一方的なの『フェア』やない。やろ?」


「え…。」



瑞季ちゃんはにっこりと笑顔を浮かべた。


それはもうすっかりいつも通りの笑顔だった。




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