竜宮城に帰りたい。
「うーん……」
「お姉ちゃん、まだー?」
「こっちの方にあったはず…」
私は携帯とにらめっこしながら、日陰の少ない道路を歩く。
海までの行き方がよく分からない。
バスに乗ればいいんだろうけど、一体何行きに乗ればいいのか…。
しかもバス停ってどっちだ…?
ここに来て自分の方向音痴を思い出した。
「暑い〜
早く〜」
「ごめん…。」
こんなことなら海までの行き方、おばあちゃんに聞いとくんだった…。
ゆかりが疲れ、数少ない日陰に収まった頃、畑の角から人が曲がってくるのが見えた。
仕方ない、あの人に聞いてみよう……
緊張する…
大丈夫。落ち着いて…
「すいません!!」
「ん?」
あれ、意外と声が若い…。
伏せていた顔を上げると、そこには想像の50歳くらい下の年齢の男の子が立っていた。
う…!!
同世代くらいじゃん!
急に緊張が高まり、何を言おうとしていたのか頭が真っ白になった。