竜宮城に帰りたい。
***
昼過ぎーー
私たちは再びあの大きなお屋敷の前に来ていた。
今日はきっと楽しい雰囲気にはならないと思い、
ゆかりはおばあちゃん家に置いてきた。
実際空気は重く、その日のメンバーは祐くんと晴と
途中で合流した瑞季ちゃんだけだった。
「で?
説得するんやろ?はよ入ったら?」
瑞季ちゃんが口を尖らせながら、晴をせかす。
「まぁ、急がんでええやん。
晴んくなんやしさ。」
「私は早くこのほっこ(馬鹿)げな話終わらせたいの!」
瑞季ちゃんは昨日から変わらず晴の東京行きに断固反対のようだ。
それにしても、前より性格がとげとげしくなったような……
『七塚』
門の表札に刻まれた大きな文字。
古い見た目のその表札が、
晴の家が地主としてその土地にいかに根付いているかを物語っている。
「……ほんだら行くで。」
緊張してる晴、初めて見るな。
晴は覚悟を決めたように握りこぶしをほどき、門を開けた。