竜宮城に帰りたい。
「お茶でも飲むかえ?」
「いらん。
そなんことより話がある。」
晴の真剣な目に、晴のお母さんは目を細めた。
「何や。」
その場にピリッとした空気が張りつめた。
みんな、そして晴ですら緊張している。
お母さんなのに……なんで……
重々しい空気を吸い込み、
晴は言葉を発した。
「俺、東京の大学行きたい。」
晴のお母さんの口許は、引きつった笑顔で歪んでいる。
「っ……
なんでな?言うてみ。」
「東京でいろんなもん見てみたいんや。
卒業したらちゃんと…「許さん。」
晴の言葉はお母さんの言葉にかき消された。
「晴たぶらかしたんは誰や。」
「たぶらかされたわけやない!」
「っ、黙りまい!!!」
穏やかだった晴のお母さんは突如そう怒鳴ると、
晴の頬を思いっきり平手打ちした。
晴は勢い余って、床に膝をついた。
「っ、晴!!」
私が心配して駆け寄ると、
晴のお母さんの目が私を睨み付けた。