竜宮城に帰りたい。



「お前か。

うちの子に何吹き込んだん!」


みんなが緊張していた理由がわかった。

強烈すぎる晴のお母さんの剣幕に、
私の体はその場で固まった。


「え…わ、私は……」


「こいつは関係ない!」


「許さん!!東京やこし!!」



晴のお母さんの平手が私に向かってくる。

っ、殴られる……!!



「おばさん。違うよ。」



殴られる直前、
その声が晴のお母さんの動きを止めた。



「っ…瑞季ちゃん……」


「何な?瑞季ちゃん、この子のこと庇うん?」


「別に、そーゆーんちゃうけど。

晴が東京行くって言ってるのは、澪ちゃんのせいやないよ。」


「ほんだらなんで…!」


「そなんこと知らんし……」



瑞季ちゃんはぷいっとそっぽを向いた。

すかさず晴が言葉を続ける。



「俺はこの町以外のことも知りたい。

ほんで、この町にちゃんと帰るよ。」


「そなんこと…信じられんよ。」



立ち上がった晴のまっすぐな言葉をかわすように、
晴のお母さんは目をそらす。


そしてさっきとは打って変わってしくしくと、涙を落とした。




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