竜宮城に帰りたい。
声を出そうとして口を開けるが、
そこから音は出てこない。
全身に冷や汗がにじむのを感じた。
私が口を出していいのかな…
お祭りの時口を出せたのは友達同士だったから。
でも今は親子の関係だよ?
私なんかがでしゃばって、また晴のお母さんを怒らせるかもしれない。
晴も本気で東京にいきたいと思ってないかもしれない。
それで、晴に嫌われたら……
その考えに至ったとき、
私は口を閉じた。
怖い…。
言えない。
言わなくていい。
これは晴とお母さんの問題で…
私は関係な…「!!」
その瞬間、晴と目が合った。
出会ったときと変わらないまっすぐ澄んだ瞳。
「…あ…わ、私…」
つい出てしまった言葉に晴のお母さんはすかさず反応した。
「何な。」
鋭い瞳に睨まれるが、なお私の脳裏には晴の瞳が焼き付いて離れなかった。