竜宮城に帰りたい。



「好きなら人の夢つぶしてええんな?」


「っ…
だって…

……」



瑞季ちゃんは、晴のその言葉を皮切りに、言葉を失ってしまった。


代わりに目からポツポツと涙を降らせる。



「泣くなや…」



ズキッ…

晴が瑞季ちゃんの頭をポンポンと撫でた。


思わず私は目をそらす。



「っ…ほんだら、約束してくれる?帰るって。」


「最初っからしとるやろ。」


「でも…不安で…っ」


「するよ。俺だって、お前らとこの町好きやけん。」



ズキッ…ズキッ…



なんで…

晴の東京行きが決まったはずなのに…



さっき潮風を感じたときの何倍も鼻の奥が痛くなる。




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