竜宮城に帰りたい。



「おねえちゃん?」


「っ!何?」


「大丈夫?」



ゆかりが心配そうな顔で私をのぞきこんだ。



「大丈夫…。」


「おねえちゃん…」



ゆかりが不安になるのも当然だ。


私の目には大粒の涙が溜まっていた。


ゆかりを誤魔化すよりも、涙を落とさないことに必死で…



「ごめん、トイレ…。」


「うん…」



私はその場から静かに離れた。


祐くんも何か声をかけてくれたけど、

何て言ったかはわからなかった。


屋上から出た瞬間に、頬には幾筋もの涙が伝っていた。



ねぇ、晴。


乙姫様が村に来てくれることは嬉しいよ。


でも、結局最後、大切なのは竜宮城で、

また浦島太郎は置いていかれてしまうのかな…。


それとも竜宮城を捨てるのかな…。


どちらにしても、なんだかとても悲しくて、

私は涙を流さずにはいられなかった。




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