竜宮城に帰りたい。
「あと4日…のぉ」
話…そらした。
「そうだよ。4日。」
それで私たちはしばらく会えない。
気まぐれな晴のことだ。
きっと一緒にこの町に戻るっていう約束も、
会わないうちに忘れてしまうんだろうな。
「お前、帰らなきゃええのにのぉ。」
「え……」
晴は相変わらず冷静な顔で私を見ている。
もう何でもいい。
気まぐれでも、
冗談でも、
嘘でも、
晴の目の中に私が映っている今だけでも……
「晴、好き。」
その言葉を合図にして、
晴は私の後頭部を引き寄せ、
静かに唇を重ねた。
晴。
時が止まればいいね。
私たちだけ、現実から切り取られた世界に行きたいね。
そう、きっと深海の中のような世界で、このままずっと……
なんてね。
晴はやっぱり『好き』と言わなかった。
私の考えがわかってるからなのか。
本当に好きじゃないのか。
そんなこともどうでもよく思えるくらい、
私は一人、深い深い海に溺れていった。