竜宮城に帰りたい。
「やだやだ!死にたくない〜」
「おい。誰がお化けや。」
「だから!あなた…が…」
ふと足元を見ると、ちゃんと足がある。
私の腕を掴む手の感触もあった。
「な、なんだ…。生きてた…」
「失礼なやつやなー
あれ、お前、さっきのアホ。」
アホだと!?
「先ほどはどうも…。」
「着いてよかったのぉ。」
少年はぶっきらぼうにそう言うと、私の腕を離し、すぐ近くのボートを押して海に浮かべた。
なんだ…。私に向かって歩いてきたんじゃなかったのね。
ひとまず彼がストーカーでないことに安心した。
「晴ー!!」
また道路の方から人が現れ、こちらに向かって走ってきた。
バッチリ目が合い、無視をするのも申し訳ないので会釈をすると、
「この子誰や、晴。」
『ハル』にそう尋ねた。
「知らん。観光客。」
「ナンパか、やりよるのぉ」
「ちゃうよ、行くで」
オールを持ち、『ハル』はボートに華麗に乗っかった。
「しばらくここにおるんかえ?」
もう一人の男の子が私に話してきた。
き、緊張…どっか行け。
「…うん。おばあちゃん家に1ヶ月くらい…。」
「へぇ、おばあちゃんって誰?」
「笹川。」
私は一瞬考えてからお母さんの旧姓を言った。
「あぁ!へぇ〜、なあ晴。笹川のばあちゃんの孫やって。」
「へぇ〜」
相変わらず『ハル』の方は私に関心がなさそうだ。
私も早くこの場から立ち去りたいけど…。