竜宮城に帰りたい。
ドアの外の晴は何事もなかったかのように、
お煎餅をまた食べていた。
私はその姿に思わず笑ってしまった。
電車はまたいつもと同じ時間の流れの中で、
走り出した。
「おねぇちゃん。席ここにしよ。」
「……そうだね。」
「…………
またすぐ会えるよ!ね。」
ゆかりは私の手を握ってくれた。
溢れては流れる涙を、私は拭うこともしなかった。
この玉手箱、
泣きすぎて食べづらいし、
ふやけて味よくわからないし…
最後まで晴は晴だね。
ねぇ、晴。
約束、覚えててね。
きっとまた私をあの竜宮城へ連れていってね。
日常に埋もれないようにもがくから、
晴も私を見つけ出して。
そうして、私たちの21日間の夏休みは終わった。