竜宮城に帰りたい。



「俺、大西 祐樹(オオニシ ユウキ)
祐でええよ。お前は?」


「え、わた、私…?」


「そう、『私』。」


「えっと…」



なんで自己紹介なんてする羽目に…。



「澪…。浦川 澪です。よ…よろしくお願いします。」


「澪ね。オッケー。おい、晴も自己紹介しまい。」


「おとましい。」


「え?」



聞き返したのに何にも答えず、『ハル』は一人でボートを漕いで行ってしまった。


「え、あの人、なんて言ったの…?」

「ん?あー、えぇっと…」

言葉をつまらせた祐くんを見て、
なんとなく意味は想像がついた。

「本当のこと教えてくれていいですよ。」

「あー、面倒臭いって…。」

「そう…ですか。」



別に今更こんなことで怒ったり傷ついたりしない。


「えーっと…あ!お前、年いくつな?」

「17です。高2…」

「ほんま!?俺らも同い年!」

「そうなんですね…。」

「敬語いらんよ。ここら辺で同い年なん、少ないんや。」

「へぇ…。」

「あ、もし暇やったら、一緒に遊ぼうで。迎えに行くけん。」

「え…!?いや、それは…!」

「なんか用事あるんかえ?」

「いや、そうじゃなくて…」


なんか断るのも悪いしな…。

でもいきなり集団に放り込まれるのなんて無理。

きっと私のせいでつまんなくなるし…。


「ほんだらええやん。」

「う…うん…。」


うぅ…、押しに弱い。


「ほんだらのー」

「う、うん。また…。」


祐くんは遥か遠くに行ってしまったボートを見ると、Tシャツのまま海に飛び込んでしまった。


どうしよう、大変なことになってしまった…。





< 19 / 236 >

この作品をシェア

pagetop