竜宮城に帰りたい。



「え?何…?」


「さっきの女が追っかけてきても、おとましいけん。」


「そっか……」



晴はよっこいしょと窓際の椅子に座った。


私もその隣に座り、外を見る。


外には小さな夕日が建物の隙間からのぞいていた。



「東京はどう?晴。」


「おっきょい駅はすげぇがの、

思ったより普通や。」


「そうでしょ?」


「でも……」



晴は外に向けていた顔を、私の方に向けた。



「お前のおる東京は…楽しいかもしれん。」


「……うん……。」



晴は私の目をじっと見つめると、

また外に顔の向きを戻した。



< 213 / 236 >

この作品をシェア

pagetop