竜宮城に帰りたい。
「晴は……気まぐれだけど、
約束は覚えててくれるよね。」
「当たり前やろ。
人を欠陥人間みたいに言うなや。」
「ふふっ……」
晴は言い返す言葉もなく、
また窓の外を眺めた。
「楽しみだね、大学生活。」
「ん?ああ。」
「サークルは入るの?」
「あー、未定。」
「選択科目は一緒に……「澪、腹へった。」
「へ……」
「なんか作れ。」
晴のさも当たり前とでも言いたげな顔を見て、
私は思わず吹き出した。
「ぷっ…あははっ…」
「なんや。」
「ははっ…ふぅ…
私……、きっとあの町に帰りたいんじゃない。」
「は?」
晴はビックリしたようにソファから立ち上がった。
「私が行きたいのは晴がいるところだよ。」
「な、なんや。そーゆー意味かい…。」
「今思ったの。
どこにいても晴って晴のまんまで。
場所ってどうでもいいかもって思った。」
「それを苦労して東京出てきた俺に言うなや。」
「ごめんごめん。
私にとっては、ってことだから。」
晴は落ち着きを取り戻し、
またソファに深く座った。