竜宮城に帰りたい。



老人になった浦島太郎は海を泳ぎます。


息も絶え絶え、

それでも帰りたい。


あなたが竜宮城でしか生きることができないのなら、

喜んで私も海の底で暮らしましょう。



乙姫にとっての竜宮城のように、

私にとっての竜宮城は乙姫だ。



あなたの元でしか生きられない。



寂しくて、苦しくて、

私はあの村では溺れてしまうのです。



「竜宮城に帰りたい!」



浦島太郎はそう叫んで海に沈んでいきました。



沈んだ先、目が覚めたら天国か竜宮城か

それを知るのはきっと、

浦島太郎だけでしょう。






Fin.
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