竜宮城に帰りたい。



「せっかくやし、澪ちゃんにこの街案内してあげようや。」

「あ、それええな!」


「ちょ、ちょっと待って!
そんなことしてくれなくて大丈夫です!
私のことより、みんなが行きたいところに…」


慌てて祐くんの提案を否定すると、瑞季ちゃんが唇を尖らせて私を睨んだ。

その様子さえ、可愛く見えてしまう。



「ええの!私たちも暇やったけん、澪ちゃんのこと案内したい!」

「え…、でも…」

「ほっとき。」


その時、割って入ったのは意外にも晴だった。


「こいつはいっぺん言い出したら簡単には止まらんけん。」

「でも、きっとつまんなく…」

「っつ…、うっせえのぉ」

「……へ…?」


なんか、今聞いちゃいけない言葉が聞こえたような…。


「うっせえっつっとんじゃ」


周りに聞こえるか聞こえないかぐらいの大きさの声で
晴がボソッと呟いたその言葉に、私の身体は凍りついた。



「ご、ごめんなさい…」



ど、どうしよう。

怒らせた…。

私がしつこく遠慮したりしていたからだ。


嫌な汗がどんどんと出てくる。


晴の一言以降、他のみんなの会話はほとんど耳に入らず、
あっという間に私の観光計画が立ってしまった。




< 27 / 236 >

この作品をシェア

pagetop