竜宮城に帰りたい。
「おい、泣きやみぃ」
「う…っつ…うん…。」
晴でもこんなに焦ることあるんだ…。
昨日出会ったばかりなのに、これも変な感想か。
「あ〜、晴が澪ちゃん泣かせとる!!」
「うっせぇ、こいつが勝手に泣き出しよったんが!」
あの晴が瑞季ちゃんに頭をひっぱたかれて、
なんだかそれがすごく面白くて、
私はここ数年で一番おっきな口で笑った。
その様子を見て、他の人たちもゲラゲラと笑っていた。
なんかすごい居心地いいな…。
東京にいた頃みたいな、合わないピースのような感覚はもうそこにはなかった。
晴のことは別に好きじゃない。
でも彼の澄んだ眼が好き。
サラサラした髪も好き。
他の人より強めの訛りが好き。
晴自身は好きではないけれど。
この感情には『やみつき』っていう言葉がちょっと似合う。
晴は絶対何か良くない存在なのに、
夢中になって心を奪われる。
私はその病気の片鱗を胸の鼓動に感じていた。