竜宮城に帰りたい。



「ごめんなさい、お待たせ…」

「わぁ、本当にあったんだ!」


ゆかりがびっくりするのも無理はない。


自転車が出てきたのは、畑の道具が入っている倉庫の奥の奥。

しかもものすごく錆びついていて、乗れるのかすら不安な2台だった。



「よっしゃ、行こうで〜」


私たちがペダルをこぐと、自転車はギーギーと苦しそうな音を立てて、前へ進んだ。


「おねえちゃん!走れたね!!」

「う、うん…!」


「うっせぇのぉ」


晴が不快そうにこちらを睨んだが、あまり嫌ではなかった。




気持ちいい…

東京とは違うカラッとした気候

海に向かう私たちのすぐ背後には山が並んでいる。


東京で感じていた息苦しさは、もうどこにもなかった。





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