竜宮城に帰りたい。



私、浦川 澪は長かった1学期を終え、蜃気楼の立つコンクリートの上をのろのろと歩いていた。


これから高校生活二度目の約40日間の長い夏休みが待っている。

仲のいい友人がいるにはいるが、部活で忙しいその子とは遊ぶ約束もできなかった。

つまらない夏休みだな…。


ミンミンと電信柱に引っ付いて鳴いているセミたちは、私が言うのも難だが哀れだ。

地下から出てきて一週間、電信柱にしかしがみつけないまま一生を終えるのだ。

木だったらそれでいいってわけじゃないけど、灼熱のコンクリートに張り付いているよりは気持ちがよさそうだ。


そんなくだらないことを考えているうちに、自分の家に帰ってきた。




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