竜宮城に帰りたい。



島に渡ってくると、木が生い茂っているためか、
さっきの浜より一層視界が悪かった。


足場も悪いし、さっきからつまづきまくっているのを晴に支えてもらっていて、申し訳ない。

と言うより、晴はなんでそんなにしっかりとした足取りなのか…。


「あ、あれ。浦島神社。」

「浦島神社…」


暗闇の中にある小さな社(ヤシロ)は正直少し不気味だ。


「お祈りしとけぇ、アホがよぉなりますように〜って。」

「う、うるさい…」


くそ〜!
ついさっき携帯を忘れて戻ってきたばっかだから、強く言い返せない…。



またしばらく晴に引っ張られて歩くと、
再び海に出た。


昼間とは全然違う海の様子を間近に見て、一瞬足がすくむ。



「疲れたんな?」

「え、あ…うん。」


別に疲れてないのにうんって言っちゃった…。


「ほんだら休もうで。」

「…うん。」


私は真っ黒な海を目の前に、木の根に腰を下ろした。


「ちょっとこま海入ってくるけん。」

「うん…ってえ!?」


晴は私の動揺なんか無視して、海の方へスタスタ歩いていく。





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