竜宮城に帰りたい。
「で?なんや。」
「も、もう戻ろうよ…」
「なんや、お前、俺が溺れるとでも思っとんのか。」
「そうじゃないけど…」
もういいじゃん。
帰ろうよ…
「なぁ、知っとん?
竜宮城の中で浦島は美しい舞見たり、
うまいもん食ったりしたって綺麗に語られちょるがのぉ、
ほんまは乙姫とエロいことばっかしとったっちゅう話。」
「っつ、はぁ!?」
急に何言ってんの、こいつ!
「乙姫が玉手箱渡しよったんは、
地上に帰りたがった浦島がごちゃけたくそ悪かったけんに。」
「え…?は?」
訛りがきつくて何言ってるのかさっぱりわからない。
「まぁつまり、乙姫は自分を置いて行く浦島がうざかったっちゅうことや。」
「だから玉手箱を渡した…?」
「そ。あんなん呪いや、呪い。」
そう言いながら、晴は暗い海の遠くの方をじっと見つめていた。
その瞳には海の色が映っていた。