竜宮城に帰りたい。
Day 4; 既成事実
「おねぇちゃーん!起きてー!」
「…ん…」
翌朝、ゆかりの声で目を覚ました瞬間、
凄まじい暑さに動く気力を一気に奪われた。
「暑〜」
「ねぇ!今日もみんなと遊びに行くんだよね?」
「え〜、うん。多分ね…」
みんなというのはもちろん、田舎で出会った友人たちのこと。
ゆかりはすっかり彼らのことを気に入ってしまったようだ。
「じゃあ早く準備しようよ!」
「わかったよ…」
仕方なく布団から出ると、幾分暑さはましになった気がした。
***
「はよーっす。」
案の定、晴と祐くんは昨日までと同じ時間に訪ねてきた。
「おはよう…」
「晴お兄ちゃん、祐お兄ちゃん、おはよう!」
ゆかりは朝から元気だな…。
小学生のパワフルさに感心する。
一生懸命あくびをかみ殺している間、
ちらっと横目で晴を覗いてみた。
相変わらずのへの字口だけれど、
今日はなんだか機嫌がいいように見える。
晴達と出会ってまだ日は浅いのに、
こんな風に理解してしまうなんて図々しいだろうか。
その時、祐くんが手を挙げ、
「注目〜」
と遠足の先生のように言った。
「今日の目的地を発表すんで!
今日は八十八ケ所のうちの5箇所くらい回るで〜。」
「八十八ケ所って、神社とかのこと…?」
「そ。全部回ったらご利益あるんやけど、
たいぎやけん5個目標な。」
「あはは…なんか楽しそう。」
「ほいだら準備しぃ」
「うん。」
「はーい!」
私たちは家の中にまた戻り、
長時間歩いても大丈夫な格好に着替え、また玄関の外に出た。