竜宮城に帰りたい。
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「おはよ〜」
「み…瑞季ちゃん、おはよう。
礼二くんに慎くんも、先に来てたんだ。」
「俺らは直でこっち来た方が早かったんや」
「そうなんだ…」
『こっち』というのは、八十八ケ所のうち(私たちの中では)1箇所目
弥谷寺(イヤダニジ)の事だ。
本来は70番目くらいの最後の方のお寺らしい。
「ほんだらとっととお参りすんで〜」
晴が面倒くさそうにそう言うと、
みんなが一斉に本堂の方へ歩き出した。
「昨日携帯海に忘れたんやって?」
瑞季ちゃんが私の隣に自然と来て、そう尋ねた。
「え、なんで知ってるの?」
「今さっき祐くんに聞いたんや。」
さすが田舎の連絡網は早い!
「実はそうなんだ。
結構大変だった…」
「お気の毒に。
今日は忘れんようにな。」
「うん、ありがとう…」
瑞季ちゃん、相変わらず優しいなぁ。
私ににっこり笑いかけると、軽やかに走って行って、
今度は晴の隣に並んだ。
なんか見ててすごくしっくり来るなぁ、あの二人。
きっと私と晴ではあんな風にはならない。
そう思いつつも、
さっきの「可愛い」を思い出し、また私の顔は熱くなった。