竜宮城に帰りたい。



それにしても変だ。

晴たちに出会った時から思ってたんだけど、
こんなに晴がワガママで、どうして誰も文句の一つも言わないんだろう。


確かに晴がみんなからハブられてるのなんて想像つかないし、
そんなことする人たちでもないけれど、
もうちょっと文句言ってもバチは当たらないと思う。



「ね、ねぇ。」

「ん?」

「え、あ…いや…」



しまった…!

瑞季ちゃんに話しかけたつもりだったのに、
祐くんが振り向いてくれちゃった…



「ん?なんや?」


緊張するけどしょうがないか…


「あのさ…晴ってなんであんなにワガママなのに
誰も文句とか言わないの…か、なぁって…」


「あぁ、そのこと?」


祐くんが屈託無くにっこり笑ったので、ひとまず安心した。


「なんか晴の一声でみんな動き出すこととか多かったし…」

「そう?あんま意識しとらんかったのぉ。」

「……」

「うん、澪が違和感感じるんも無理ないわ。

晴はのぉ、この地域の中で結構裕福な家の長男なんや。」


え、晴おぼっちゃんだったの!?


「ほんで、俺らと違うて、将来都会行かんでここ残るっちゅうから、
さらに大人たちが子供ん時からごじゃ可愛がってきたんや。」

「へぇ〜…」



きっと少子高齢化の今、そんなことを言ってくれる子供はさぞかしありがたい存在だったのだろう。



「俺らも都会組やし、あんまり逆らえんで、
まるで王様みたいなのになってしもたんや。」


「そうなんだ…」


「こなん田舎の事情どうでもええやろ。
ごめんな、変なこと聞かして。」


「う、ううん…!
教えてくれてありがとう…」



祐くんはまた穏やかな笑顔を浮かべると、
私たちの前の庭園をじっと見つめた。


祐くんも都会に行く責任みたいな、プレッシャーを感じているんだろうな。


それに比べて私って、いい意味でも悪い意味でも何にも背負ってるものがない。



それってすごく楽だけど、

すごく

からっぽだ。




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