竜宮城に帰りたい。
「百面相…してた?」
「うん。結構ウケたわ。」
ウケるような変な顔してたのかな…
なんか恥ずかしい。
「えっと…」
話題、逸らしたい!
「…そういえば、晴と瑞季ちゃんって仲良いよね!
”一応美男”と美女だから並ぶと絵になるよね!」
「あぁ、あの二人?」
「うん!」
私たちはまた自転車に乗り、長い帰路の上を進み始めた。
帰る頃にはすっかり日も沈んでいるだろう。
もうあの浜の夕陽には間に合わないな…。
「あの二人は付きおぉとるけん。」
ギギーーッッ!!
錆びついたブレーキ音が蝉の声をかき消して鳴り響いた。
「え、付き合って…?」
「…え、あぁ…」
私たちの前を仲よさそうに並んで走る二人を呆然と見つめる。
「そなん驚く?」
「え…いや、意外で…」
「あの二人はのぉ、ちっさい頃からずっと仲よかったんや。」
「へ〜…」
「さっき言ったやんか、晴んく(晴の家)裕福やって。
瑞季んくも割と裕福やし、瑞季地元残るけん、
親公認、みたいな。」
「いいなづけ、的な…」
「それや、それ。」
嘘…
漫画の中でしか聞いたことがない言葉が実在するなんて…
「なんか…すごいね…。」
「確かにすごいのぉ。
身近にいすぎて当たり前になっとったけど。」
祐くんが「行くで」と言ったので、
私も慌ててブレーキを離し、ペダルを蹴った。